親が大切にしているものを把握する

古い着物

「死ぬときは身一つ」ということはわかってはいるけれども親世代に限らずモノへの執着はなかなか捨てきれません。ましてやモノのない時代に育った親たちは「私が子供だった頃はこんなものはなかった」とか「まだ使えるのに捨てるのはもったいない」という考えが深くしみついていてなかなかモノを手放すことはできないでしょう。
特にその人の歴史を語る品々は「今は使っていないけど、手放すと寂しい気がする」という思いが強く、なかなか手放せないものです。
一点物のたんすなどの嫁入り道具、代々伝わる銘々皿、若いころ作ってもらった着物、子供が使ったおもちゃや衣類、分厚いアルバムにきれいに貼られた写真など、数えればきりがありません。子供たちにとっては意味がなくても、親にとっての思い出が詰まっているのです。
「断捨離」ブーム以降、テレビや雑誌で、業者が入って家を片付ける、といった特集をよく目にするようになりました。「支払い金額は何十万円、片づけを完了するのに2か月かかる」など、何らかの形で、その大変さを目にすることで、親世代にも「こんなにモノがあったら、のちのち子供たちはたいへんだろうなあ」と思う気持ちが生まれてきているのも事実です。

説得して「捨てさせた」モノには、しこりが残る

私たちベストフレンド・古美術昇華堂の出張査定や出張買取をさせていただいたお客様からこんな話を聞きました。
3年前にお父様が病気で他界。お母様が75歳を迎えるのを機に同居することになったそうです。岐阜の実家は処分し、お母様には、名古屋市内の娘さん夫婦が暮らす一軒家の一部屋に引っ越してもらうことになりました。
「都会で暮らす」という未知の事態に、お母様は「モノを処分する」ことを一大決心。ダブってしまう家電や、引っ越し先に入らない家具は粗大ごみとして処分し、いただきものの食器や本、レコード、生前お父様が使っていたオーディオなどは私たちベストフレンド・古美術昇華堂にお譲りいただきました。そこで最後まで悩んでいらっしゃったのが衣装ケースに残った着物でした。私たちベストフレンド・古美術昇華堂では着物も効果買取が可能ですのでいかがですか?とお勧めしましたが、なかなか首を縦に振ってはくれませんでした。袖は通さなくとも1年に1回は虫干ししてきた大切な着物。お母様の思い入れも深かったのでしょう。
出張買取から数週間後、娘さんがお店にやってきて大切にしていた衣装ケースをお持ちになりました。やはり新しいお住まいには収まらずに、むき出しの状態で置いてあったそうです。娘さんの「思い切って買い取ってもらったら?」という言葉にお母様も泣く泣くご納得いただいたとのことでした。
1週間ほどたったある日お店の電話が鳴りました。娘さんから「あの衣装ケースはまだ残っていますか?」とのお問い合わせがありました。残念ながら当社の流通に送ってしまった後だったのでその旨をお伝えすると、お母様が折に触れ「あの着物はとてもいいものだった」などとおっしゃるので一枚だけでも手元に置いておきたいとのことでした。
残念ながら今回はご希望に沿うことができませんでしたが、「説得して諦めさせる」ということはあとにしこりが残ってしまうのだなと感じました。

今回の娘さんのケースではありませんが、やはり子供の価値観で判断をしてなんでも間でも捨てたり減らしたりすると、親は生きがいまでも奪われたように感じてしまいます。

まずは親が大切にしているモノ、思い出がこもった捨てがたいものを把握し、たとえそれを理解できなかったとしても、村長する気持ちを持ってあげるということの大切さを感じました。
私たちもご納得いただいたモノのみを買い取らせていただいていますが、今回の件はいい勉強になりました。

出張買取